周辺知識

生命保険料控除について詳しくなろう!

※ 2023年度時点の年末調整・確定申告での話です。

『生命保険料控除って何種類かあってわかりにいくい』

『昔と今の生命保険料控除の計算方法の違いがわかならい』

『生命保険料控除でいくら得するのか』

といった疑問をお持ちの方も多いでしょう。

生命保険料控除は、前回解説した地震保険料控除に比べてもかなり複雑です。
ですが、今回の記事を最後まで読んでいただければきっとスッキリと理解できると思います。

地震保険料控除について詳しくなろう!この記事は「地震保険料控除でいくら戻ってくるのか知りたい」「別荘が地震保険料控除の対象になるか知りたい」といった方向けに詳しく解説しています。...

生命保険料控除とは

1月1日から12月31日の1年の間に支払った、本人や配偶者、親族を保険金の受取人とする生命保険契約等の保険料や掛金がある場合は、支払った金額に応じて所定額をその年の所得から控除することができます。

これを‟生命保険料控除”と言います。

対象保険料について

旧契約と新契約による区分の差

まず生命保険料控除は、契約日により「2011年12月以前に加入した契約である『旧契約』」と「2012年1月以降に加入した契約である『新契約』」の2つに分かれます。

更にそこから、

2011年12月以前に加入した契約(旧契約)は、
一般生命保険料
個人年金保険料
の2つに区分に

2012年1月以降に加入した契約(新契約)は、
一般生命保険料
個人年金保険料
「介護医療保険料」
の3つに区分されています。

保険の種類と区分類

旧契約は2区分に、新契約は3区分に分かれることをみてきました。
では実際に、なんの種類の保険が、どの区分に属するのか例を挙げていきます。

旧契約

一般生命保険料

保険金受取人が契約者や配偶者、またはその他の親族である生命保険の保険料

例:定期保険、終身保険、家計保障保険、医療保険、介護保険、がん保険、所得補償保険、疾病入院特約、災害割増特約、傷害保険など

個人年金保険料

個人年金保険料税制適格特約が付加された個人年金保険契約にかかる保険料

例:個人年金保険(個人年金保険料税制適格特約が付帯された契約に限る)

個人年金保険料税制適格特約を付帯するには、以下4つの要件を満たす必要があります。

  1. 年金受取人が契約者または配偶者のいずれかであること
  2. 年金受取人は被保険者と同一人物であること
  3. 保険料払込期間が10年以上であること
  4. 年金の種類が確定年金・有期年金であるときは、年金開始日における被保険者の年齢が60歳以上で、かつ年金受取期間が10年以上であること

なので、個人年金保険であっても、「一時払い個人年金保険」は、③の要件を満たさないため、個人年金保険料の対象にはなりません。

個人年金保険料税制適格特約の付帯されていない個人年金保険や、変額個人年金は一般生命保険料に含まれます。

新契約

一般生命保険料

人の生存や死亡が理由で保険金・給付金が支払われる部分にかかる保険料

例:定期保険、終身保険、家計保障保険など

個人年金保険料

旧制度と同じ

介護医療保険料

入院・通院等が理由で保険金・給付金が支払われる部分にかかる保険料

例:医療保険、介護保険、がん保険、所得補償保険、疾病入院特約など

新契約では、身体の傷害のみに基因して支払われる災害割増特約傷害保険などの保険料は生命保険料控除の対象外になりました。

控除額の計算方法と上限額

所得税と住民税それぞれの控除額の計算方法と上限額は以下の通りです。

所得税

2011年12月以前の締結契約(旧契約)

旧契約において所得税の控除額は、「一般生命保険料」「個人年金保険料」それぞれ最高50,000円の合計100,000円が上限額となります。

 

払込保険料 控除額
25,000円以下 全額
25,000円超
50,000円以下
払込保険料×1/2+12,500円
50,000円超
100,000円以下
払込保険料×1/4+25,000円
100,000円超 50,000円

2012年1月以降の締結契約(新契約)

新契約において所得税の控除額は、「一般生命保険料」「個人年金保険料」「介護医療保険料」それぞれ最高40,000円の合計120,000円が上限額となります。

 

払込保険料 控除額
20,000円以下 全額
20,000円超
40,000円以下
払込保険料×1/2+10,000円
40,000円超
80,000円以下
払込保険料×1/4+20,000円
80,000円超 40,000円

住民税

2011年12月以前の締結契約(旧契約)

旧契約において所得税の控除額は、「一般生命保険料」「個人年金保険料」それぞれ最高35,000円の合計70,000円が上限額となります。

 

払込保険料 控除額
15,000円以下 全額
15,000円超
40,000円以下
払込保険料×1/2+7,500円
40,000円超
70,000円以下
払込保険料×1/4+17,500円
70,000円超 35,000円

2012年1月以降の締結契約(新契約)

旧契約において所得税の控除額は、「一般生命保険料」「個人年金保険料」「介護医療保険料」それぞれ最高28,000円の合計70,000円が上限額となります。

 

払込保険料 控除額
12,000円以下 全額
12,000円超
32,000円以下
払込保険料×1/2+6,000円
32,000円超
56,000円以下
払込保険料×1/4+14,000円
56,000円超 28,000円

旧契約と新契約の両方に加入している場合

旧契約と新契約の両方に加入していて、生命保険料控除を受ける場合は、いずれかの選択をすることができます。
なお、上限額は1区分ごとの金額です。

  1. 旧契約についてのみ申告
    【上限額】
    ・所得税50,000
    ・住民税35,000

  2. 新契約についてのみ申告
    【上限額】
    ・所得税40,000
    ・住民税28,000

  3. 旧契約と新契約の両方を申告
    【上限額】
    ・所得税40,000
    ・住民税28,000

2011年12月31日以前に加入した契約(旧契約)であっても、2012年1月1日以降に契約の更新や転換、特約の途中付帯を行うと、それ以降は契約全体が新契約扱いになります。

生命保険料控除でいくら得するのか

ここまで生命保険料控除の控除額について説明してきましたが、では具体的に生命保険料控除でいくら得するのか。

それは、

所得控除金額×税率が得する金額です。 

 

所得税の税率は、課税所得によって異なりますので下の速算表をご参照ください。

例えば、課税所得が400万円の人の税率は20%です。

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円から
1,949,000円まで
5% 0円
1,950,000円から
3,299,000円まで
10% 97,500円
3,300,000円から
6,949,000円まで
20% 427,500円
6,950,000円から
8,999,000円まで
23% 636,000円
9,000,000円から
17,999,000円まで
33% 1,536,000円
18,000,000円から
39,999,000円まで
40% 2,796,000円
40,000,000円以上 45% 4,796,000円

出典:国税庁ホームページ「所得税の税率」

住民税の税率は、地域によっては異なりますが概ねどの地域も10%を採用しています。

 

例えば、課税所得が400万円の人が、新契約のみで「一般生命保険料」「個人年金保険料」「介護医療保険料」をそれぞれ80,000円ずつ払っていた場合

所得税の控除額は、40,000円×3=120,000円
住民税の控除額は、28,000円×3=84,000円>70,000円

なので
所得税は、120,000円×20%=24,000円
住民税は、70,000円×10%=7,000円
31,000円得するといった計算になります。

では、この金額が正しいかどうか確かめてみましょう。

なお、課税所得所得税住民税の算出方法は以下の通りです。

課税所得=収入ー経費ー所得控除

所得税課税所得×税率ー税額控除

住民税課税所得×10%-税額控除

※ 住民税は住む地域により、税率が異なりますが一般的には10%の自治体がほとんどなため、税率10%で計算します。

それでは、条件をおさらいします。

  • 課税所得:400万円
  • すべて新契約
  • 保険料払込方法:年払
  • 終身保険料:80,000円
  • 個人年金保険料(個人年金保険料税制適格特約付き):80,000円
  • 医療保険料:50,000円
  • がん保険料:30,000円

所得税

生命保険料控除を受けた場合

所得税の新契約においては、1区分40,000円の計120,000円が上限となります。

今回のケースの場合、終身保険は「一般生命保険料」に。

個人年金保険は、個人年金保険料税制適格特約が付帯されているので個人年金保険料」に。

医療保険とがん保険は新契約なので介護医療保険料」に振り分けられます。

そして、それぞれ保険料が80,000円を超えているので、控除額は40,000円×3=120,000円となります。

 

(課税所得ー控除額)×20%-427,500円=税額

(400万円ー120,000円)×20%-427,500円=348,500円

よって所得税額は348,500円となります。

生命保険料控除を受けない場合

(課税所得ー控除額)×20%-427,500円=税額

400万円×20%-427,500円=372,500円

よって所得税額は372,500円となります。

 

つまり、生命保険料控除によって所得税は24,000円(372,500円ー348,500円)ほど安くなります。

住民税

生命保険料控除を受けた場合

住民税の新契約については、1区分28,000円の計70,000円が上限となります。

今回ケースでは、それぞれ保険料が56,000円超なので、控除額は28,000円×3=84,000円

上限額は、70,000円なので、控除額も70,000円となります。

 

(課税所得-所得控除)×10%=税額

(400万円ー70,000円)×10%
393,000円

よって住民税額は393,000円となります。

 

生命保険料控除を受けない場合

(課税所得ー控除額)×10%=税額

400万円×10%=400,000円

よって所得税額は400,000円となります。

 

つまり、生命保険料控除によって住民税は7,000円(400,000円ー393,000円)ほど安くなります。

 

よってパターン1の人の場合、所得税24,000円・住民税7,000円の合計31,000円税金が安くなるということです。

このことから、所得控除金額×税率は正しいということが証明できました。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

今回は、生命保険料控除とはなにか、上限額はいくらか、実際にいくら戻ってくるのか例を挙げてみてきました。

地震保険料控除と違い、「旧契約」「新契約」、「一般生命保険料」「個人年金保険料」「介護医療保険料」などを考えないといけないので難しかったと思います。

控除額さえ計算できれば、いくら得するのか自体の計算は簡単なので、皆さんの場合はいくら戻ってくるか、一度計算してみてはいかがでしょうか。

今回の記事が少しでも皆さんのお役に立てば幸いです。

以上、最後までお読みいただきありがとうございました!

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