『ポルシェからフィアットに乗り換えるから保険料は安くなるよね』
『新しくプリウスを買った。ハイブリッド車だし保険料も安いでしょ』
実際に筆者が自動車保険の営業をしていてお客様に言われたことです。
これは、半分正解半分不正解です。
ご存知の方もいるかと思いますが、自動車保険の保険料は車種によって大きく変わります。
もう一度言います。
自動車保険の保険料は車種によって大きく変わります。
少しではありません。
それでは、解説していきます。
・車種によってどのくらい保険料が変わるのか
・車種ごとの料率はどう決められているのか
・自動車保険の観点からみた車選びのポイント
車種によって保険料が変わる?
自動車保険の保険料は車種によって保険料が変わります。
更に言うと、同じ車種でもガソリン車かハイブリット車でも保険料が変わります。
さて、ここで問題です。
Q. レクサスにはISという車がありますが、このISは、ガソリン車(ターボ車)とハイブリッド車の2種類が販売されていますが、ガソリン車とハイブリッド車のどちらの方が保険料が安いでしょうか?
※ 2022年1月1日時点での料率クラスです
正解は…
ガソリン車です!!!
なんとなく、イメージ的にハイブリッド車の方が環境にも良いし保険料も安そうってイメージがありますよね。
たしかに、自動車保険には保険会社にもよりますがハイブリット車・電気自動車にはEco割引というのが存在します。
ですが、このレクサスISの場合はそのEco割引よりもハイブリット車の方が保険料が高い理由があるということです。
それでは見ていきましょう。
自動車保険の保険料の算出方法
前提として自動車保険の保険料は大きく
「契約する車による要素」
「保険事故の実績による要素」
「契約内容による要素」
の3つの要素から構成されています。
今回は、「契約する車による要素」について解説していきますが、残りの要素についてはまた別の記事で詳細に述べていきます。
型式別料率クラス制度
型式別料率クラス制度とは
世の中には、「自家用普通乗用車、自家用小型乗用車、自家用軽四輪乗用車」の違い、「ファミリーカー、スポーツカーなどの使用目的・ニーズ」の違い、「形状・性能」の違いなどで、多種多様な車があります。
また、その違いにより自動車事故が起きた際の車の損傷具合、搭乗者のケガの具合にも違いが生じます。
そこで、保険料の公平化を図るため「自家用普通乗用車、自家用小型乗用車、自家用軽四輪乗用車」では、型式ごとにおける保険事故の実績をもとに料率クラスを決定しています。
その料率クラスの制度を『型式別料率クラス制度』と言います。
型式別料率クラスの区分と保険料の差
型式別料率クラス制度では、
自家用普通乗用車・自家用小型乗用車は、クラス1~17の17区分
自家用軽四輪乗用車は、クラス1~3の3区分
が設けられています。
クラス1の保険料が最も安く、数字が大きくなるほど保険料が高くなります。
クラスが1つ上がると、保険料が約10%上がります。
つまり、クラス1とクラス17では最大約4.3倍の保険料の違いが発生する計算になります。
「対人」「対物」「傷害」「車両」はそれぞれ
「対人」⇒「対人賠償」
「対物」⇒「対物賠償」
「傷害」⇒「人身傷害等のケガの補償」
「車両」⇒「車両保険」
に対応しています。
なので、例えば
「対人:7」「対物:7」「傷害:7」「車両:7」という料率クラスの車から
「対人:7」「対物:7」「傷害:7」「車両:17」という料率クラスの車に
乗り換えたとしても「車両保険」を付帯していなければ影響がないということです。
冒頭で言いました、ポルシェからフィアットに乗り換えたお客様はまさにこのパターンで車両保険を付けていないお客様でした。
◆ポルシェ911(型式:99666)の料率クラス
対人:4、対物:1、傷害:9、車両:15
◆フィアットパンダ(型式:13909)の料率クラス
対人:7、対物:5、傷害:7、車両:7
※2022年1月1日時点での料率クラスです
車両保険を付けていないので、車両の料率クラスは関係ありません。
傷害こそ2クラス、ポルシェの方が高いですが、対人は3、対物は4フィアットの方が高くなっています。
型式別料率クラスの決定方法と見直し方法
型式別料率クラスは、損害保険料率算出機構が毎年1月1日付で見直しを行っています。
また、契約する車の型式別料率クラスは保険始期日が属する年の毎年1月1日付で見直されたものが適用されます。
※ 損害保険料率算出機構は、損害保険業の健全な発展を図るとともに、お客様の利益を保護することを目的として、「損害保険料率算出団体に関する法律」に基づき成立された中立機関です。
損害保険料率算出機構は、金融庁監督の下、毎年各保険会社からデータを収集し、科学的・工学的アプローチや保険数理の理論等の合理的な手法を用いて、「対人」「対物」「傷害」「車両」の型式別料率クラスを決定しています。
簡単に言うと、型式ごとにその車はその年、「対人賠償」で保険金をいくら払って、「対物賠償」で保険金をいくら払って、「ケガの補償」で保険金をいくら払って、「車両保険」で保険金をいくら払って、というのを各保険会社から毎年収集し、それをもとに料率クラスを決定しています。
つまり、その型式のその車に乗っている人が事故が多く
「対人賠償」で多額の保険金を払っていれば「対人」の料率クラスが、
「対物賠償」で多額の保険金を払っていれば「対物」の料率クラスが、
「ケガの補償」で多額の保険金を払っていれば「傷害」の料率クラスが、
「車両保険」で多額の保険金を払っていれば「車両」の料率クラスが、
それぞれ高い料率クラスに設定されるということです。
だからこそ、ポルシェに限らずいわゆる高級車は、修理すればこそ高いものの、高いからこそ皆んな大事に乗るので事故が少なく車両保険部分を除けば意外にも保険料が安いのです。
自動車保険の観点からみた車選び
もちろん乗りたい車に乗るのが一番だとは思いますが、そこは保険ブログですので自動車保険の観点からみた車選びについて2つの方法をお伝えします。
型式別料率クラスの低い車を選ぶ
「料率クラスの低い車を選ぶ」
自動車保険の観点からみた場合は、「料率クラスの低い車を選ぶ」これに限ります。
最初に申した通り好きな車に乗るのが一番だとは思いますが、例えば2台の購入候補の車がある場合などに、この方法で決めるのは大いにありだと思いますし、実際に筆者のお客様にもいらっしゃいます。
『いやいや、そんなこと言ったってどうやって調べんだよ』
そうお思いになられると思います。
ですが、実は損害保険料率算出機構のホームページで簡単に調べられます。
調べ方は、「メーカー・車名」を選択肢から選ぶ、もしくは「型式」で検索するだけと、かなり簡単に調べることができます。
※ 型式は「プリウス 型式」等で検索したら簡単に出てきます。
更に、料率クラスも去年と今年の分と表示されるので、去年より料率クラスが高くなってきているなといったこともわかりますので、車を検討する際は調べてみることをおすすめします!!!
ハイブリッド車と事故の多いイメージの車は避けろ
『いちいちネットで料率クラス調べるのもめんどくさいよ』
っていう、人も中にはいると思います(笑)
そんな人は、この方法で決めてください。
「ガソリン車とハイブリッド車ならガソリン車」
「あとはイメージで決める」
なんじゃそりゃって感じですよね(笑)
順番に説明いたします。
ガソリン車とハイブリッド車ならガソリン車を選ぶべし
ガソリン車をとハイブリッド車ではハイブリッド車の方が保険料が高い場合が多いです。
※必ずとは言えませんので正確に調べたい場合は先程の損害保険料率算出機構のホームページをご参照ください。
例えば、この記事で問題に出しましたレクサスISの例をみていきます。
◆レクサスISのガソリン車(型式:ASE30)の料率クラスは以下の通りです。
対人:6、対物:2、傷害:7、車両:9
◆レクサスISのハイブリッド車(型式:AVE30)の料率クラスは以下の通りです。
対人:4、対物:7、傷害:9、車両:11
※2022年1月1日時点での料率クラスです
対人については、ハイブリッド車の方が料率クラスが低くなっていますが、それ以外の項目については逆にハイブリッド車の方が高くなっています。
車両の料率クラスが高い理由は、ハイブリット車はガソリン車と比べて修理代が高くなりがちだからです。
これは購入時にも言えますが、ハイブリット車はハイブリット用のバッテリーやモーターを用意せねばならず、ガソリン車より高い理由となっています。
それがそのまま、修理費の差となり料率クラスに表れています。
車両の料率クラスがガソリン車よりハイブリット車の方が高くなりがちな理由はわかったと思います。
その他の項目については、次の「イメージで決める」のパートで解説します。
イメージで決める
イメージで決めるとはどういうことか。
それは、「事故をよく起こしてるイメージのある車は避ける」です。
既に説明した通り、型式別料率クラスは、損害保険料率算出機構が各保険会社からデータを収集し決定しており、事故が多ければその型式の車は料率クラスが高くなります。
逆に言うと、事故が少ない車は料率クラスが低く保険料も安いということです。
だからこそ、「事故をよく起こしてるイメージのある車は避ける」なのです。
例えば、プリウスはどうでしょうか?
2019年4月東京都の池袋で当時80代男性が運転し暴走したプリウスに母子が轢かれ死亡する悲しい事故が起きました。
同じく2019年6月筆者の住んでいる福岡県でも80代男性が運転するプリウスが猛スピードで交差点そのまま建物に突っ込み、運転していた男性と助手席に乗っていた奥様がお亡くなりになりました。
例えば、
型式:NHW20のプリウスの料率クラスは
対人:12、対物:10、傷害:9、車両:11
先程のレクサスと比べても高いですよね。
型式にもよるので一概には言えませんがこのように事故の多いイメージがある車は料率クラスが高い傾向にあります。
これは、決してプリウスが悪いわけではありません。
筆者自身はプリウスは良い車だと思っていますし、筆者の両親も乗っています。
問題は車でなく、運転者にあります。
先程例に挙げた池袋の事故、福岡の事故に共通していること。
それは、高齢者が運転していることです。
もちろん高齢者でも運転が上手い人もいますが、やはり高齢者は平均して若い人より事故が多く、その事故一件一件が大きな事故であることが多いです。
そうすると、事故による保険金の支払いが増え料率クラスの上昇に起因し、保険料が上がるということになるのです。
そのことから「高齢者がよく乗っているイメージのある車は避ける」とも言い換えられますね。
まとめ
- 普通車・小型車・軽自動車、使用目的、形状や性能の違いで事故が起きた際の損傷具合が違うので公平性を保つために自動車保険には型式別料率クラスが設けられている
- 型式別料率クラスは普通車・小型車は1~17クラス、軽自動車は1~3クラスにわけられている
- クラスが1つ違うと、対応した部分の保険料が10%異なる
- 自動車保険の観点から考えると、購入する車は損害保険料律算出機構のホームページで調べて料率クラスの低い車を選ぶべき
- ガソリン車とハイブリッド車ならガソリン車を選ぶべき
- 調べるのが面倒くさい場合は、事故が多いイメージのある車や高齢者がよく乗っているイメージの車を避けると良い
いかがでしたでしょうか。
今回は、車種によって自動車保険の保険料が違う理由、自動車保険からみた車の選び方についてみてきました。
車種によってそんなに保険料が違うんだ、車選びはそんな方法もあったのかなど、気づきや学びはありましたでしょうか。
今回の記事が少しでも皆さんの生活の一助となれば幸いです。
以上、最後までお読みいただきありがとうございました!